変われるってムテキインタビュー vol.44 SPINNS 雑貨バイヤー 佐藤 夏帆

変われるってムテキインタビュー vol.44  SPINNS 雑貨バイヤー 佐藤 夏帆

「変われるってムテキ」を世界中に。
それが、私たちスピンズのVISIONです。

世の中に服屋さんは星の数ほどあれど
私たちスピンズは「変われるってムテキ」を伝えたい服屋さん。
自らが変わっていくことで、自分の人生をクリエイトし
ワクワクを世界に伝えていく。

このインタビューは、そんな私たちの「変われるってムテキ」物語です。

今回のインタビューはSPINNS 雑貨バイヤー佐藤 夏帆さんにお話をお伺いしました。

「自分への不甲斐なさからの絶望」

ー佐藤さんの幼少期のお話をお聞かせください。

佐藤:小学校6年生の頃から抱いていた夢がインテリアコーディネイターでした。
私の家は裕福な家庭では無かったので「自分の部屋」がありませんでした。
当時、よくポストに入れられていた家の間取りが載っているチラシを見ては「こんな部屋に住みたい」と妄想をしていたことが、いつの間にかインテリアコーディネイターというお仕事がしたいという夢に変わり、元々「やりたいことに集中する」タイプの私は専門学校を経て新卒でインテリア関係のお仕事に就職することにつながります。

佐藤:夢であったインテリアの会社に就職できたのはいいのですが、直感的に動くタイプの私はロジカルに動くことを求められる会社の風土に合わず3ヶ月で退職することになります。
就職に伴って実家から初めて県外での一人暮らしをし、引越し費用なども親からお金を出して頂いたこともあり短い期間で辞めてしまうことへの申し訳なさや、友人達はまだ大学生で就活を始めたばかりのような時期に退職してしまう自分への不甲斐なさから絶望を感じ「一人になりたい」と思っていたり「社会って難しいな」と感じた辛い時期でした。

「東京へ行くための資金稼ぎが目的で入社」

ーそんな佐藤さんがどのようにしてSPINNSに出会ったのでしょうか。

佐藤:それでも実家に戻った私を母親は嫌な顔もせず受け入れてくれて「仕事探さないとな」とぼんやり考えていました。
インテリア関連でできる仕事はないかなと考えていたのですが地元には理想の会社がなく、どこかで「東京で働きたい」という気持ちがあったので東京に行くためのお金を貯めようという目的からアルバイトでいいから働こうと考えました。
その時インテリアの次に興味があったのがファッションだったのでSPINNSに応募することになります。
元々「元気さ」が私の強みでもあり、それまで面接に落ちたことがなかったので受かる自信だけはありました。
そして思惑通りにSPINNSのアルバイトに合格し働くことになりました。

佐藤:東京に行くお金を貯めるために働き始めたのですが、私の性格上「任された仕事は全力でやる精神」を持って目の前のお仕事に私なりに全力で取り組んでいました。
インテリアの会社の時は新入社員ということもあり会社のルールや雑用、慣れるまでは受身的に覚えることばかりのお仕事だったのですが、SPINNSでは他のスタッフが退職して人が足りなくなったこともありお仕事をどんどん任されることが多かったです。
「お店を良くするために頑張って欲しい」と当時の店長から背中を押していただき、自分で考えて売り場づくりをしたり接客をしたりとSPINNSでのお仕事が「楽しいこと」、「やりたいこと」を表現できる私にとって楽しい時間であり場所になっていきました。

佐藤:ひとまず半年頑張って東京に行くためのお金を貯めると期限を決めていたのですが、すぐにはお金が貯まるはずもなく気がつくと前任の店長の異動や他のスタッフの退職などもありお店で2番手の立場になっていました。
その頃は「お金貯まらない」という事と「お仕事楽しい」という状況下でSPINNS松山店を良くしていきたいという思いがいつの間にか自分の中に生まれていました。

「松山に熱い奴がいる」

ー東京に行くための資金稼ぎから心境が変化した後どうなるのでしょう。

佐藤:よく「爪痕を残す」という表現を使うのですが、お金を貯めることが目的で入ったSPINNSでも「爪痕を残したい」という感情が芽生えて「評価されたい」という願望に変わっていきました。
それから時々出張で来店されるバイヤーさんや本部の方々とは絶対にご飯に行って自分の気持ちや夢を話す機会を逃しませんでした。
そうしてると恐らく「松山に熱い奴がいる」と認識していただいたのか、本部での研修などへのお誘いを頂き、参加する機会を得ることにつながりました。

佐藤:地方店なので周辺エリアの店舗とは距離も遠く自店舗だけのつながりだった環境から、研修に参加することで他の店舗の方々とのつながりが増えて同じような悩みを持っていたり、目標を語ったり聞いたりする機会に触れることで全店に仲間がいるという実感を感じ「この会社楽しいな」と思うタイミングが多くなった時期でもあります。

佐藤:そんな矢先に当時の店長が異動することになり、店長をやらないかというお話を頂きました。
正直、店長のお仕事の大変さを感じていたのと店長よりもバイヤーへの憧れが強かった私は躊躇したのですが「バイヤーになるにしても店長の経験をしてからの方がバイヤーとしての視野が広がる」と言われバイヤーになるためのステップとして店長を引き受けることにしました。
スタッフのことをよく知っているので他店舗で店長を始めるより自店舗なら業務もやりやすいとも考えていました。

「やり尽くし、頑張れた2年間」

ー店長を引き受けた佐藤さんの店長での日々はどうだったのでしょう。

佐藤:しかし、いざ店長になってみるとスタッフとぶつかることが増えました。
元々「考えずに行動する」タイプで「無駄に自信がある」という性格だったので売り上げが上がるため、お客さんが喜んでくれるためなら周囲の意見を聞かずに、自分の意見を通すことが増えました。
店長という立場もあり意見を通しやすかったこともあります。

佐藤:当然ですが、スタッフの意見も聞かずに勝手にどんどん売り場を変えたりしていたのでスタッフから不満や不信感が生まれていく結果になります。

佐藤:そんな中一番信頼していたスタッフとぶつかることになります。
私は「こうした方がいい」と思う気持ちは人一倍強いのですが、話せば受け入れるタイプでもあったので、ミーティングを都度意識的に行うことでスタッフの気持ちを受け入れる機会を設けることで何とかその関係性を修復していきました。

佐藤:この店長を任せていただいた2年間はスタッフ達とぶつかり合いながらもお客さんに喜んで頂くために出来ることをやり尽くし、頑張れた2年だったと思います。
実際にお客さんも増えた2年間でした。

佐藤:2年が経った頃「バイヤーにならないか」とお誘いを頂きました。
店長としてもある程度業務に慣れたことで次のステップに行きたいと思っていたことと、部下のスタッフも成長し私が抜けても任せられるタイミングだったので25歳でバイヤーになる決断をします。
バイヤーにもなれましたし、東京へ転勤となるので元々SPINNSに入る時に目標にしていたことも叶う結果になりました。

「自分ってダメかも」

ーついにバイヤーと東京行きを掴んだ佐藤さんのその後はどうなるのでしょう。

佐藤:しかしバイヤーになってからがしんどい事が起こる事になります。
職種が変わったので1、2年はイチから新人としてお仕事を覚えていくフェーズです。
しかし同時に実務として仕入や商品開発も進めていくのですが、元々「直感で動く」タイプの私のやり方では物事が進まないという現実にぶつかりました。

佐藤:商品の仕入れや開発をする時に色や型を決めるのですが「可愛いと思ったから」、「売れると思ったから」と直感で判断していた私は上司から「なぜこの色なのか」、「なぜこの型なのか」の説明を求められます。
でも直感型の私はその「なぜ」を言語化できない事に戸惑ってしまいました。
その質問自体が「試されている」と感じるようにもなり「可愛いと思ったから」と答えたら突っ込まれることの恐れから、思っていないことを言ってしまったりもしました。
直感で判断しているが故に考えていないことを見透かされて自分の出来なさを感じたり、自分の「可愛い」を否定されていると感じて自信がなくなっていきました。勿論、上司が私のために言ってくださっていることも分かりながら。

佐藤:そうする内に好きだった上司が一緒にいるのが恐いと感じる1年が続きました。
他のチームからも指摘される事が増え、自信があった自分が「自分ってダメかも」と思い始めました。
それまでは「好き」を表現するのが得意だった私が「この場所は自分に合っていない」と感じ始め、褒められることもあったのですが指摘8割、評価2割くらいの感覚だったので苦手な事に向き合うのが本当に苦しかった時期でした。

「自分にしか出来ない事が見えてきた」

ー苦しい時期を過ごした佐藤さんはどのように乗り越えて行ったのでしょうか。

佐藤:それから1年が経って段々と出来るようになりました。
直感で動くのは相変わらずでしたが「判断をした理由」を聞かれることはわかっていたので一度考えを巡らし「ふわっとした」直感に従う時は理由が後付けになりがちだったので「これがいい」と感じている理由を上司に対して「一緒に考えてください」と言えるようになったり。
同時に仕入れをしたり開発した商品が売れなかった時に会社のお金を無駄にしてしまう責任を感じるようになり直感だけでなく「意図」を考えることの大切さを学んでいきました。

佐藤:そんな中「直感的にいいと思ってスピード速く行動できるのはあなただけ」と言って貰えることも増え、少しずつ自分の強みも出せるようになってきました。
自分にしか出来ないことを実行に移す時も考える幅が広がった実感があります。

佐藤:結果的に辛かった時期はありましたが、今は自分の苦手とする事も明らかになりながらも自分にしか出来ないことも見えてきて両方を通じてお客さんに喜んでいただける商品開発に活かしていこうと得意を活かすチャレンジをしています。

佐藤:指導してくださった上司が退社される事になり、その頃には一緒にいて恐いという気持ちは無くなっていましたが頼っていた部分が大きかったので自分たちがSPINNSの商品を作っていく自覚がより強まりました。
任された仕事を受け身で進めていくのではなく、自分で考えて行動する「攻め」の姿勢の重要性を感じつつ、バイヤーをしていてお客さんに喜んでもらえる喜びと自分自身がワクワクする感覚でお仕事ができる喜びを感じています。

「自分の意思を持ち、伝えること」

ー佐藤さんにとっての「ムテキ」とはどんなイメージでしょうか。

佐藤:難しいですが「自分の意思を持ち、伝えること」だと思います。
3年間ずっと「自分の意思はないのか」と問われ続けてきました。
直感だけでは「意思」は伝わりません。
そう感じた「理由」を考え伝えることで相手は理解や共感に繋がることで物事は動き始めます。
だから私にとっての「ムテキ」は「自分の意思を持ち、伝えること」です。

「どんな人にも得意はある」

佐藤:これまでの経験から伝えたい想いがあります。
私は「タスク管理」や「返信が遅い」などと周りの人が当たり前に出来ることが苦手です。
きっと他にも「みんなは当たり前に出来るのに出来ない」ことで悩んでいる人はいるのではないかと思います。
でも、苦手なことが多い私にも「得意なこと」はあったなと今では感じます。
悩んでいる時はその大切なことを忘れがちですが悩んでいるどんな人にも「得意」があること。
そんな事を伝えていきたいと感じています。

プロフィール
佐藤 夏帆【りさこ】
愛媛県松山市出身
SPINNS商品部レディース部門 バイヤー

21歳で株式会社ヒューマンフォーラム(SPINNS)に入社。
23際で店長、、
現在は雑貨部門のレディースバイヤーをし東京で活動中。

インタビュー・ライター
大槻彦吾 (g5designs & Co.)
1973年千葉県生まれ、横浜市在住。
g5designs & co.主宰し「あらゆるものをデザインする」活動を行っている。